「言葉の壁」以外にも・・

薬剤師として、薬を介して患者さんの支援をしていますが「言葉の壁」にぶつかることもしばしばです。たとえば「咳止め」を説明したときは、多言語の医療用語集から探し当てた単語を書き写し発音してはみたものの、患者さんの表情から「理解してもらえた!」という手ごたえは感じられませんでした・・・。何度かそのような経験をしたあとに、おそるおそる医療通訳の人に「咳止めって、どうやって説明していますか?」と尋ねました。すると、ベテランのその方は「私の場合は、咳を取り除く薬、という言い方をすることが多いと思います。」と教えてくれました。
そこで納得。私が書いた単語は、日本語でいう「鎮咳薬」のような表現だったようです。日本人だって「これはチンガイヤクです」といわれたらピンとくるでしょうか? 実は、「言葉の壁」だけでなく、乗り越えなければいけない「壁」は他にもある、ということに気が付いた瞬間でした。
医療者は得てして「説明」のような一方通行の話が多く、相手の確認を求めたり、患者さんの話をゆっくり聞いてコミュニケーションを積極的にとりにいったりすることが少ないように思います。それが外国人の方だと、なおさら困難を伴います。(もしくは困難を伴うと思い、消極的になってしまいます。)
このような経験からNAMIの部会である「薬局での外国人患者対応委員会」の活動が始まりました。皆さまにもお力を貸していただき、今後よりよい薬局での支援を目指していきたいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。

 

NAMI賛助会員 M.I

0 コメント

自立に寄り添う

医療通訳の役割とは、医療現場で日本語を母語としない患者さんと医療者との

円滑なコミュニケーションをサポートすること、しかし、日本語を母語としない≠日本語が話せないではありません。

稀ですが、通訳がついていても、患者さんが通訳を使わず、一方的に医療者と話そうとすることがあります。そんなときは、医・患に医療通訳の立ち位置を確認した上で通訳が待機中でも両者の会話を聞きながらメモ取りをします。患者さんが医療者の話が理解できなくなる瞬間に通訳が訳出するための対応策です。とは言え、受付から診察室、検査、会計まで通訳を必要とするケースが圧倒的に多いです。

病や言葉の壁に不安を抱えている患者さんにとって母語で意志疎通することは、ストレスや不安の軽減に繋がります。安心して通院しているうちに、受付や会計が自分でできる 採血、検査なら医療者とのやり取りは自分で(日本語で)対応できる→ 外来受診も通訳なしで試してみたいと徐々に見えてきた患者さんの自信と自立に幾度大きな喜びを味わってきました。

ある患者さんが話してくれたこと「病名告知の時に大きなショックを受け、言葉が通じない異国で暫く落ち込みました。しかし、主治医は治療方針から治療経過まで常に丁寧に説明してくれたことで辛い治療ですが、自分は徐々に病気を受け入れ、向き合うようになりました。主治医に感謝し、現場で医療通訳に会うと今日も言葉の壁に心配なく受診できると思うとほっとします。」

多くの患者さんの言葉に医療通訳の使命、言葉の壁は乗り越えられないもの

 

ではないと思い知らされ、勇気を頂きました。☆感謝☆(P.S)

0 コメント

医療通訳研修

毎年、JIAM(全国市町村国際文化研修所)で2日間の医療通訳研修があります。

https://www.jiam.jp/workshop/doc/2017/17215/tr17215.pdf

 

 

平成28年度のテーマは「医療通訳の基礎」だったのですが、平成29年度は「「医療通訳の取り組み~外国人が安心して医療を受けられるための環境整備~」となり、病院職員やNPO、ネイティブ相談員など、広い分野の人たちが参加されました。以前、医療通訳は地域住民のための権利保障として考えられてきましたが、近年では訪日外国人、メディカルツーリズムなど広がりを見せています。この研修が始まった頃の参加者は、行政か国際交流協会の方々でしたが、近年ではさまざまな人たちが参加されるようになってきました。少し先の話ですが、今年度は31218()-219()「外国人が安心して医療を受けられるための環境整備」をテーマに開催される予定です。研修という学びの場所であると同時に、他地域の行政や医療機関の取り組みについての情報交換ができる場所として、今後も続けてほしいなと思っています。 (む)

0 コメント

「医療通訳は必要ない」と言ったけど・・・

「英語が話せるから必要ないです」「妻は日常会話はできるので、説明はだいたいわかっているので大丈夫です」

 

医療現場では時々、医療通訳を紹介してもこんな風に断られることがある。また、同時に医師からも「英語で説明して理解されているから、必要ないんじゃない?」と言われることもある。この場合、医療通訳が本当に必要ではなく、医師が英語や簡単な日本語で説明して十分であるか?それはNoである。

 

「英語が話せるから必要ない」と言っていた患者さん。医師の説明にいつも「質問はない。わかっている。」と話し、無口な印象。

ところが…医療通訳者が同席した瞬間に堰を切ったように話し出した。あっ、こんなに話す人だったんだ…そしてこんなに聞きたいことがあったんだ。治療上の規則を守れないのは「文化の違い?」「理解が悪い?」「パーソナリティー?」と医療スタッフは関わり方に戸惑っていたが、結果、医療スタッフの説明を十分に理解できていなかったからということがわかった。医療スタッフの患者さんに対する印象が変わる。そして、説明が終わった後に、医師も「通訳に来てもらってよかった」と話し、患者さんも医師もほっとした感じがお互いに伝わった。

 

「妻には医療通訳は必要ない」と言っていた患者さん。

医療通訳者に同席してもらい病状を説明すると、奥さんは「病名以外わからず不安だったが、安心した」と話された。そして今後の生活で気をつけることなど積極的に質問し、熱心にメモをとられていた。患者さんも「妻が安心してくれてよかった」と話された。

 

医師や医療スタッフからの説明を正しく伝えること…それは医療者と患者さんのコミュニケーション促進を図り、よりよい医療の提供につながるだけでなく、疾病やけがという人生の危機的状況にいる患者さん・家族への「情緒的サポート」も伴っていると感じる。そして、それぞれが今後の生活において自分自身のこととして、自らが取り組むことへの手助けとなっている。そんな風に「医療通訳」の役割や効果が大きいこと日々実感する。

 

医療現場では、潜在的に医療通訳を必要としている患者さんが多くいらっしゃる。患者さんの潜在的なニーズを拾い上げ、医療通訳者につなぐことができるように、医療機関のスタッフも医療通訳の効果や役割を認識する必要があると思う。

 

また、「医療通訳」がどの地域でも同じように活用できる社会を目指して、NAMIの活動が展開されたら素晴らしいと思う。それぞれの立場で取り組むことで、ソーシャルインクルージョンの実現につながるひとつなのではないかと考える。

 

*ソーシャルインクルージョン:

「全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげよう、社会の構成員として包み支え合う」という理念

 

 

(賛助会員C.S

0 コメント

私の口から・・・

ご承知のように通訳という仕事は、Aさんの発言を聞き、その内容をそのまま違う言語に変換して、あたかもAさんが発言しているがごとく1人称でBさん(たち)に伝えることです。なので、自分だったら絶対言わないようなフレーズを口にすることもありますが、俳優さんのようにAさんになりきることが仕事の一部になったりします。

 

これが医療通訳となると、時にその内容が厳しすぎて自分の口からその言葉を発することを一瞬躊躇してしまうことがあります。「あなたのお子さんは、このまま手術しなければ1ヶ月くらいで亡くなります。でも手術しても手術中に亡くなることもあります。どうされますか?」メモを取る手が震えました。出だし、声がちょっと上ずってしまいました。「医療通訳」をしていなかったら、一生他の方に「あなたのお子さんは・・亡くなる・」と自分の口から言うことはなかったはずです。できるなら私のこの口からその言葉を発したくなかったです。訳出に集中することでその通訳を終え、そこで「医療通訳」としての「覚悟」ができました。

 

続けて流産された方に「よくあることです」とおっしゃる先生。先生にとっては日常のことかもしれないけれど、この目の前にいる方にとっては「よくあること」ではないんですよ~と思いながらその通りに訳す私。案の定、患者さんから無言の哀しい空気が伝わってきました。もちろん先生は、「流産はあなたのせいじゃないよ」とおっしゃりたかったことはわかっていますが、もう一言二言欲しかったなぁと。私が付け足すわけにはいかないし。診察室を出て、つい「よくあることかもしれないけど、よくあることじゃないよね。」と訳の分からないことを口走ってしまったら、彼女、哀しそうな目がちょっとだけ穏やかになった気が。。。気のせいかも。

 

「あなたの癌はもう全身に広がっていますから。」そうかもしれないけれど、他に言い方は・・・と思いながらその通りに訳出。重苦しい空気を引きずったまま病院を後にし、ずっと引きずったまま。

 

変わった例。「私はあなたが嫌いなの!大嫌いなの!!!」なぜか夫婦喧嘩の通訳をする羽目に。その日初めて会ったよその旦那さんに

“I don’t like you! I hate you!!!” と言っている私。(ms)

 

 

0 コメント