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患者になって思ったこと

 変形性股関節症で4月に手術をしました。

硬さが気になり始めて十数年。痛みで椅子に座れない、寝ても、起きても痛む状態になり3年半。痛みが薄らぐ頃には、骨棘形成や筋力低下が進み、股関節可動域制限を代償運動で適応しようとします。股関節症は全身の骨格の歪み・筋力・気力・内臓の機能低下につながる。これが実感です。

 骨折ならば待ったなし。ところが、骨格的な変形に伴う慢性疼痛・可動域制限の場合、手術か否かは患者自身が決めます。医療機関ではX線画像等の結果を受け、股関節の状態と人工股関節の耐久年数から、手術をしてもよい年齢だというお話があります。

 その説明を受けても、患者は、保存的療法で、まだ頑張れるのではないか、自分の努力が足りないのではないかと様々な情報を求め、治療院や教室に通います。手術に踏み切る決心は簡単につくものではありません。その間、患者は社会的な活動、仕事や交友関係の変化に悩み、時には鬱に陥りながら長い期間を過ごします。生活を大きく左右する出来事です。

 このたび、信頼できる医療機関、医師はじめ多くの医療従事者の皆様の献身的なお仕事のお蔭で、今、新しい股関節となり、生き直す気持ちで毎日を過ごしています。入院中、看護師の皆さんが診療、リハビリ、服薬、食事、社会資源など各部署との連携のかなめとなり、患者を支えてくださっていることも理解できました。

 また、同時期、股関節手術を受けた方々とLINEグループができ、情報交換ができるようになり、孤独に陥りやすい中、大きな支えとなっています。

 私は、自身の疾患を通して、初めて、患者さんの気持ちを少し理解できたと思いました。そして「これが日本語を理解できない外国の方だったらどうなっていただろう。」と様々な場面で考えていました。

 医療機関は患者の意思を尊重しながら最適な治療を目指します。患者は疾患はもとより、それにより生じた様々な環境の変化や悩みや迷いを抱え医療機関を受診します。そして、通訳者はプロ集団である医療従事者と患者の凝縮された診療の場に立ち会います。

 「患者は勉強しに来るのではない。助けてほしくて病院に来る」     ある医師の言葉です。

 通訳者は、患者が必要とする情報や伝えたい情報、医療機関が提供したい情報の双方の意味を理解し、必要とされる配慮が何であるかを考えながら、その場に立ち会うことが必要です。

 「患者が理解できる通訳ができているか、その上で患者がその内容を受け止められているか。」そういうことに配慮できるよう、通訳者として十分に準備をしなければならないこと、学び続けることの大切さを改めて思い直しています。(H・M)